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「良いね、私も予約しようかな」
「有難うございます、ところでお客様は本物?」
「へ?」
つい口が滑って、この女を自分の妄想の産物では無いかと疑ってしまう。
気を取り直して、俺はなれない笑顔を精一杯作り上げた。
「本人、と間違えました、ご予約はあなた様御本人で?」
「うん、あーけど予約はやめとこうかな、食べれるか分かんないし」
冷やかしかよ。
渡そうとした行き先を失った予約の紙を、予約受付のテーブルに置き直して旗を気休め程度に振ると、女は罰が悪そうに笑い後ろへ振り返った。
「随分後ろを気にしてるね、もしかしてさっきの騒ぎの関係者?」
「騒ぎ?」
「悲鳴が聞こえた」
「あーあれかーそっかー」
なにが、そっかー、なのか知らないが、ますます居心地悪そうに愛くるしい顔を歪めると、女は商売用のテーブルに飛び乗り腰を下ろした。
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