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闇の中、異世界を映す丸い光。
その光だけがこの世界で唯一の明かり。
「ムゥゥゥ…」
魔王は異世界を睨み唸り声を上げていた。
異世界にいる人間たちはX'masとやらで、何だか楽しそうである。
本来ならば魔王が全世界を支配するハズであった。
しかし、ちょうどニ年前のX'mas。
勇者一行なる者たちが現れ、全てを奪っていった。
家族も財産も臣下たちさえも。
気絶から目が覚めた時には、全てを失ってから一年が経っていた。
そう。魔王にとってX'masとは全てを失った日なのである。
忌ま忌ましく思いながら、楽しそうな人間たちを見ると、余計に憎しみが湧き怒りが抑えきれなくなった。
「覚えておれ!! 必ずお前たちに不幸を与えてやる」
まずは力を蓄えるべく、魔導書庫へ歩きだそうとした時だ。
「………………………ん?」
微かに遠くで音が聞こえた。
魔王以外には誰もいなくなったこの城で、遠くから音など聞こえるはずはないのだ。
魔王は侵入者の気配に神経を尖らせた。
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