漆黒の闇

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  子育てなど経験はなかったが、人間たちの生活を見、時に物を借りたりしながら天子の相手をする魔王。 一日が天子の相手をするだけで終わる。 そんな充実した日々が続いた。 時折、天子は魔王の考えがわかるのか、魔王が悪き考えをすれば泣き叫び、良い考えならば笑い声をあげた。 その反応に慣れてきた頃には、人間に対する憎しみが薄れていた。   そんな生活が二年半続き、愛らしい女の子に育った天子。 「パパァ…おせなかかゆぃのぉ」 天子は気持ち悪そうに言ったので、衣服を捲り上げる。 背中には生えかけの翼。 それを見ながら魔王は思う。 (この翼をもいでしまえば…) 魔王の子になることはできる。翼の変わりに邪心を植え付けることで、正統な継承者に。 しかし魔王はその考えを打ち消すかのように、頭を横に振った。 (誰もいないこの漆黒の闇の中…この子独りでは残酷過ぎる) 魔王は何事もなかったかのように衣服を戻し言った。 「翼が生えてきただけぢゃ」 「つばさぁ~?」 「お前はいずれ天使になる子…翼が生えるのは当然ぢゃ」 「ふぅ~ん」 天子は納得したように歩き出した。 この時だけ、魔王の邪心に天子は反応を見せなかった。  
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