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数分で決着はついた。美しい男は、何かの武道でもしているのか、かなりの強者であった。
逃げていく男たちを後目に、男は女に手を差し出す。
「大丈夫ですか?」
先ほどの冷たい表情とは打って変わって、朗らかな優しい笑顔だ。
「ええ……あのお名前は?」
「藤森空(そら)ともうします。洋服が汚れてしまいましたね。よろしければ、私に付き合ってくださいませんか?」
女に断る理由もなく、その手を取った。
****
橋崎真子は、高級車に揺られ、それまた高級と称されるホテルにつれて行かれた。見た目以上に空が金持ちだったのは驚きだが、いいカモでもあった。
正面玄関に車が止まると、ドアマンが車のドアをあけてくれる。空が降り、真子をエスコートするように降ろしてくれる。
まるで、姫様だな。
「お待ちしておりました、空様。今日はご宿泊でございましょうか?」
ホテルの正面で出迎えたのは明らかに一番の責任者だとわかるような初老の男だ。
「ああ、今日は兄夫妻のクリスマスパーティーに呼ばれてな。家に戻るのもなんだから、利用させてもらう。」
「さようでございますか……。はて、そちらはどちら様でございましょう?」
男が真子を見てほほえむ。
「ああ、私の友人だ。今日は一緒に泊まる予定だから。」
と空は真子に笑い掛ける。
つまり、そういうつもりなのかと考えたが今更、逃げるのも面倒くさい。こんだけ綺麗な男だしいいかなと思う節もある。まぁ相手がよけれ場の話だが……。
ホテルの中はより豪奢だった。吹き抜けの上には煌めくシャンデリア。絨毯はふかふかしすぎて歩きにくいぐらいだ。
うぁ~場違い。
など考えながら、空にエスコートされ部屋に向かう。
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