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ワインを、三本開け、真子はいつの間にか、空の横に座っていた。
酔いが回ったのは真子だけだ。空は平気な顔をしている。それが何故かもどかしくて、空にさらにワインを注いだ。
「おい、もう飲めないぞ。」
「酔ってねぇ、お前。」
近すぎる場所に空を感じて真子はドキリとする。
美しいのだ美しすぎるのだ。たとえ男に見えようとも、関係はない。それは、正常な男の性を狂わせるだけの色香がある。
「飲み過ぎだ。」
「何で、よわねぇーんだ?」
「知りたいか?」
何故だろう、空はペースを必ず手中に置いてしまう。こっちが翻弄されてしまいそうなほど壷惑な笑みで。
それを知りたくて真子は必死で頷いた。酒の力と、芽生えてきた感情にまかせて頷く姿は、子供のようである。
「やめておこう。君は、踏み出すべきじゃない。」
しかし、かわされる。
「俺は君じゃねぇ。」
「真子か?」
違うと駄々っ子のように首を振る。
「……真一だ。」
縋りつくように空のバスローブを握りしめる。
何でこんなにドキドキしてんだ?中坊じゃあるまいし。
「真一……?いい名前だ。」
空はにこりと笑うと、真一を引き寄せる。手慣れた手つきで、顎を持ち上げて、唇を寄せた。
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