45人が本棚に入れています
本棚に追加
空の唇は柔らかかった。女性の柔らかさとはこれほどだったかと痛感する。
刺激的だ。悪い意味で。
「空……」
それは、触れるだけの軽いキスだったにも関わらず、真一を欲情させるのには十分だった。
唇だけでは物足りなくなった真一は、空を引き寄せた。それが、自身が押し倒されるような形であったとしても、気にならなかった。ただ酔いが回った頭で必死に空に触れたいと懇願したのだ。
「駄目だ。」
しかし、空は受け入れなかった。
どうしてとは聞けない。
こんなにも、出会ったばかりだというのに、恋いこがれているのに、それは叶わない。
「真一は、踏み込むべきじゃない。」
空の低く通る声が、真一を宥める。その長い指が真一を撫でる。
「俺が貧乏だからか?」
「違う。」
「じゃあ何だよ!」
感情任せに叫ぶと空は悲しげな表情になった。
「真一と私は生きる世界が違う。多分、理解してくれないだろう。でも、踏み入れるべきじゃないんだ。」
しきりに踏み入れるなと言ってくれたのは空の優しさなのだとそのときは理解できず、ただ空が欲しいがために、空にこう言った。
「今日はクリスマスだ。だから、プレゼントが欲しい。」
それが、どんなに自分を陥れる申し出だったのか、今ならわかる。
ともかく、空は苦笑いをして、後悔するなよと真一を引き寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!