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確実に言えることは、雪が降り出して、聖夜はホワイトクリスマスになった。そして、空は、真一を抱かなかった。
そのかわり、踏み込むなと言った世界を教えてくれた。なのに……。
「近寄るな!」
なんてひどい言葉を吐いたのだろう。それを自分で望んだのに自分で拒否したのだ。
そのときの悲しい空の顔は一生忘れられない。
「それが普通の反応だよ。」
まるで、真一がそうすることを最初から分かっていたかのように、空は笑った。空が付けた傷を押さえながら、真一は、後ずさった。
「もう何もしない。信用できないなら、帰るといい。」
空は、立ち上がると、奥の部屋に消えていった。
あのとき、彼処に留まっていればきっと彼女は、真一を受け入れたに違いないと……しかし、あのときは恐怖しかなかったのだから。
今日もあの時のように雪が降る。空から雪が降る。すぐに溶けてしまう雪が降る。
ジングルベルは今宵の空に響いているのだろうか。
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