それ以外には何も無かった

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「七月一杯で退職させて頂きたいのですが…」   「いきなり何だよ…何で?」   「東京へ行って音楽活動に専念したいんです!!!」   「あのな、その気持ちは分かる。二つ返事で辞めさせてやりたい気持ちは山々なんだ。。でも今のウチの状況分かるよな…?」       ここは埼玉県某所。 男は疲れきっていた。   「はぁ~。毎日毎日残業残業で疲れた。 大した金も貰えねぇのに…残業だってサービスだしよぉ」 給料は二十万円に手が届くか届かないか。 月のサービス残業はゆうに五十時間を越す。と、いったそこそこ大変な仕事である。 「こんなバイト辞めようかなぁ…面接の時のシフト希望と180度違うしよぉ…… 最近音楽活動も手が止まる事が増えたなぁ… たまには息抜き程度に携帯のサイトでも見てみるか。」 そう。 この男は趣味として音楽活動をやる傍らアルバイトをする、世間一般から見たらフリーターなのである。   カチカチカチカチカチ…   (なんか出会い系みたいな奴があった…やってみるか) ~~~~~~~~~~~~ 初めまして( ^ω^)❤ 埼玉に住んでます(゙ェ゙*) パチンコ屋でバイトしながらラップとかしてます( ^ω^) HIPーHOP聞くのが好きなんで、是非仲良くして下さいね\(^o^)/💕 ~~~~~~~~~~~~   「これでヨシっと! こんなサイトにこんな紹介文でメールとか来んのかなぁ…」   そんな事を考えながら、男は仕事で疲れていた為眠りについた。 これが後に 自分にとって大きな転機となるなんて知るよしもなく…       もう春の“それ”とは違い外は蒸し、雨雲が頻繁に顔覗かせ始めた六月某日。 取り柄なんて無い 彼女も居ない ただ、少しだけ優しくて 少しだけ責任感のある   男の話である。
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