プロローグ

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「おはようございます」 私の声が廊下に響く。 ふかぶかとお辞儀をしながら、初めて見る先生に勇気を出して言ってみた。 朝の澄みきった空気がただでさえ緊張している気持ちをさらに引き締める。 うちのおじいちゃんくらいの先生は、私を見ると笑顔で「おはよう」と返してくれた。 その笑顔を見たら、少しだけ緊張がほぐれた気がした。 今日は、初めての高校生活第一日目。 もう、私は中学生じゃない。初めて実感出来た。 入学式を明日に控えた昨日は一日中そわそわして、夜もろくに眠ることが出来なかった。 なのに朝早く起きてしまった私は、家に居ても落ち着かないので早めに支度をして、家を出てきたのだった。 桜の花びらに小さな雫が、ついている。 せっかく開花した桜は、昨日降った雨のせいで少し散ってしまったみたい……だけど、薄く色付いたつぼみが沢山ついているところを見ると、まだまだ咲いてくれそうだと私をほっとさせた。 散った桜は、アスファルトの上を隙間なく埋めつくし、私の歩く道に薄桃色の絨毯をつくっていた。
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