プロローグ

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その中を高校の制服で歩くと、いつもの道でも新鮮な感じがする。 いや……、もしかしたら風景に関係なく、緊張のせいだけなのかもしれない。横断歩道では、つい、左右を何回も確認してしまった。 早く出てきたけど、教室に人が居たらどうしよう……。 そんな考えが、さらに追い討ちをかける。 学校を見つけ、校門を通り、昇降口に張られた紙から名前を探して、クラスを調べた。 「……静谷 夜由利(しずたに やゆり) 1-A」 キュッ、キュッと、ピカピカに磨かれた廊下を歩くと音がした。 入学書類の中にあった学校の案内図を見ながら1-Aに、私は向かった。 本当は、藍津高校に来た中学のみんなのクラスも調べたかったが、昇降口の前に長くいるのはなんとしても、避けたかった。 理由は、人付き合いが苦手だから。 何か話かけようとしても、言葉を出せずに飲み込んでしまう。「これでは駄目だ」と私でも分かっているのだけど、どうしても思ったことを口に出せない。 その経験が、この緊張に繋がっている。 私はすれちがう先生に勇気をだして挨拶をし、北校舎の廊下に入ってから三番目の教室の前まで来た。 きゅっと、止まり上を見上げ、ドアの上に掛けられたプレートを確認する。 1-A……ここだ!
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