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少女は、このまま大学へと進学する事に、とくに思い入れを感じてはいなかった。
流されるように進学し、
就職し、
いつか結婚し、
家庭を持ち、
子供を産み…
母は、少女が人並みの人生を歩む事を望んだ。
しかし、少女は、
明日の事さえ、ぼんやりとしか考えてなかった。
流されるまま、
なる様になればいい。
そんな事をぼんやり考えながら、
放課後、塾へと向う。
途中で差し掛かる、商店街の一角に、爆音のテクノを響かせた、華やかなギャル服の店があった。
露出気味の服を着たマネキンが、
セクシーに腰をくねらせたポーズで、硝子越しに通行人を見つめている。
その前を足早に通り過ぎる少女。
地味な紺色のセーラー服。
校則をキチンと守った、
膝下の長いスカート。
靴は白のスニーカー。
マネキンは、まるで少女を鼻で笑っているかの様に、静かに微笑んでいる。
無意識に、うつむく。
硝子に写る少女の横顔は、今日も冴えない。
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