八郎物語

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  ミーちゃんはゴロゴロと喉を鳴らし、八郎の母に甘えまくっている。   八郎と桃江は、大きく広げていた腕を虚しい気分で戻した。   「猫…、返すわ、あんなにお母さんが好きみたいだから…」   桃江は、苦笑いしながら、そう言った。   八郎も、「うん…」と、 力なく言葉を返す。   そんな暗い顔をしていた八郎に、 ミーちゃんが近づいてきた。   チリリン… チリリン…   「ミーちゃん…!やっぱり僕の事も好きでいてくれて…」   チリリン… チリリン…   バリリッ。   ミーちゃんは、八郎の頭を引っ掻いた。   んみゃぁぁー!!   (訳・なんなのそのヅラ!! キモイんですけど! ダサいんですけど! テメェからその顔取ったら何も取り柄ねぇじゃん! なのに出し惜しみしてんじゃないわよ!!)   もういっちょ、バリリッ…!   …パサッ…。   八郎のヅラが、静かに地面へ落ちた…。  
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