12月24日

2/6
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
夜の住宅街。 辺りはしんと静まり返り、歩く人影は見当たらない。 ただ綿のような雪の、ちらちらと舞い落ちる音だけが聞こえてくる。 どの家にも緑や赤や黄の、色とりどりのイルミネーションが飾られ、窓から漏れる明かりと相まって温かな雰囲気を醸し出している。 一軒家の並ぶ通りの角に、他のそれとは趣の違う、煉瓦造りの古めかしい家があった。 明かりが灯っているのは、入道雲のように雪の積もった三角屋根の真下の小窓だけである。飾り付けもない。むしろ他の家の照明のためか、余計に黒い影が引き立ち、さながら幽霊屋敷のようである。 その三角屋根からは空に向かって長い筒が伸びており、背後にはぽっかりと大きな満月が浮かんでいた。 冷えた空間に、その月は一層鮮明に輝き、街に降り注ぐ雪に反射して宝石のようであった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!