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夜の住宅街。
辺りはしんと静まり返り、歩く人影は見当たらない。
ただ綿のような雪の、ちらちらと舞い落ちる音だけが聞こえてくる。
どの家にも緑や赤や黄の、色とりどりのイルミネーションが飾られ、窓から漏れる明かりと相まって温かな雰囲気を醸し出している。
一軒家の並ぶ通りの角に、他のそれとは趣の違う、煉瓦造りの古めかしい家があった。
明かりが灯っているのは、入道雲のように雪の積もった三角屋根の真下の小窓だけである。飾り付けもない。むしろ他の家の照明のためか、余計に黒い影が引き立ち、さながら幽霊屋敷のようである。
その三角屋根からは空に向かって長い筒が伸びており、背後にはぽっかりと大きな満月が浮かんでいた。
冷えた空間に、その月は一層鮮明に輝き、街に降り注ぐ雪に反射して宝石のようであった。
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