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その丸い光の真ん中に、突如小さな黒いものが現れた。
三角屋根に飛び下りたその黒いものは、よく見ると人の形をしており、頭には天辺の垂れ下がった帽子をかぶり、背中の辺りに大きな袋を引っ掛けているようだ。
「ここが最後の家か」
影が白い息を吐きながら呟く。そして上空を見上げた。
「今時煙突ねぇ。お約束だな。悪いけどカイちゃん、そこで待っててくれ」
カイちゃんと呼ばれたもの――。
黒い影の視線の先に、異形の物体が浮遊していた。
浮遊――まさしくソレは空に浮かんでいた。
枝分かれした鋭い二本の角に、宙を蹴る四本の足。
そして――背負っているのか、異形の物体から紐状の線が伸び、その先にソリらしき物が繋がっていた。
カイは角を振って鈴をしゃんしゃん鳴らせた。
「さ~て。仕事納めだ。どうか最後は良い子でありますように」
影は煙突に向かって手を合わせた。
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