1枚の手紙

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男は読み終えた手紙をぎゅっと握った。 少年は、そっぽを向いたまま眠っている。ピンク色に染まった頬は、寒さのせいだろう。 この部屋に暖炉はあるが、久しく使われていないものと見受けられる。ぺしゃんこな布団はどす黒く汚れ、まともに布団としての機能を果たしていないと思われた。 男は真っ赤な帽子をかぶり、真っ白な袋を背負い、早々と煙突を登った。 外に出ると、銀色の月が沈みかけていた。 時間がない。 「カイちゃん、行くぞ」 異形の浮遊物体――全長四メートルはあろう美しき金色の毛に覆われたトナカイは、より激しく宙を蹴った。 男がトナカイに繋がれたソリに乗り込んだ。 「また最初からやり直しだ。世界中のサンタクロースたちに、全てのプレゼントを全ての子どもたちに渡すように伝えておくれ」 男は帽子を深く被り、濡れた目を必死で拭った。 それでも涙は止どまらず、胸の中が熱くなるのを抑え切れなかった。 「さあ、急げ!」 トナカイは一度大きく雄叫びをあげ、駆け出した。 それは肉眼では捉え切れないほどの速さで、ちかちかと煌めく星空に消えた。 しゃん、 しゃん、 しゃん――…。
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