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白猫が泣きやんだのを確認して剣士は口を開く。
「校長のところに案内してくれるか?」
突然素直になった、とか、従順になったとかに思われたくないと思ったのか、
白猫はコクリと頷いただけだった。
その様子に、緊張してるのかな?と思った剣士は前を歩く白猫に話しかける。
「なぁ。君の名前、教えてくれよ」
なんでもないふりをして歩いているが、おそらく話しかけられたことにひどく緊張してるのだろうな…と、
白猫のぴんと立ったしっぽから伺える。
剣士の顔から笑みが耐えないのは、この白猫のこうした反応のためであろう。
「シロ」
高すぎず、低すぎず。
響きのよい声は確かにそう発音された。
「…シロ…か…」
そのまんまだな、なんてことはたとえ思っても言えない。
僅かに肩にかかるまっすぐで癖のない髪は真っ白で、頭から可愛らしく立つ耳との境目がわからない。
穴の開いた特別なローブから、やはり白いしっぽがすらりと伸びていて、
そのゆるやかな動きに思わず触りたくなるような好奇心をかき立てられる。
肌も、やはり他の猫たちと比べると明らかに白かった。
毛が白いということが肌に影響しているとは言われていないのだが、彼は確かに全身が白かった。
「俺はクロス・セリアス」
それを聞いて足を止めたシロは、上目遣いでクロスを見る。
「クロ……」
「そこで止めるな」
笑いながら立ち止まったシロを追い越す。
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