- 涙 -

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クロスという名前だからといって、彼は全身黒いというわけではない。 無造作に切られた髪は後ろで縛ってあり、髪は金に近い茶色だった。 紫かと間違えるような美しい青色の瞳を持つシロとは違い瞳は焦げ茶。 質素なマントを身に纏ってはいるものの、持ち合わせている剣は見るからに一等品で、 よく手がかけられてあるようだ。 だいぶ距離が離れて慌てて隣へ走ってくるシロに、クロスは歩幅をあわせてやる。 170も後半の身長のクロスに比べ、シロは150の後半と小さい。 一生懸命歩幅を大きくして歩いているつもりなのだろうということは、 歩くたびに大きく揺れるしっぽから容易にわかった。 「クロスは何歳?」 「25だよ」 隣を歩くシロが自分に関心をむけてくれていることが嬉しくて、クロスは微笑む。 「じゃあ、10つ違いだ」 「……てことは15か?」 一度留年したのか。 クロスがそう考えていると再びシロが質問をしてきた。 「どうして使いが要るの?」 「それは後で教えてあげる。さぁ、入ろう」 立派な建物の前に来ていた二人はやや緊張した面持ちでその中へと入っていった。
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