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シロの運んで来た布団をもう一つのベッドに敷いてクロスはそこへ寝転んだ。
「昼間走ったからかな~。」
クスクス笑いながらそう零すと、机を整理していたシロがハッとして近付いて来た。
「僕を追いかけてた時走ったから疲れたの…?」
心配げに顔を覗き込んで来る様子に、本当は違うが、と心で呟くも、
悪戯っぽく目を細めてクロスはシロを見上げた。
「ああ。誰かさんは意外に足が速かったからな」
疲れたなあ、とわざとらしいほど大袈裟に言うと、シロは見るからにおろおろし始める。
そして、段々しょんぼりと垂れて来た耳と申し訳なさそうに寄せられた眉で、
いよいよ縋るように見つめ返されれば、クロスは冗談だよ、と上半身を起こしてシロを隣りに招いた。
「息苦しいなと思ったんだ。お前がああいう奴等の中でずっと卒業を待っていたのかと思ったらな。」
一瞬きょとんとしたものの、その意味を理解したシロはほんわりと微笑み、
クロスの脚に手を付いて首を振った。
「僕は、信じてた。いつか白い僕を、魔法使いとして必要としてくれる人が現れるって。」
それがクロスだよ、と心底嬉しそうに目を細める様子は本当に可愛らしく、
クロスは思わず魅入ってしまった。
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