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…ゴーン…ゴーン……
大きな鐘の音と共に、生徒たちが登校してくる朝。
いつもよりもずっとおめかしをしている彼らの中で、
存在を消すかのように肩をすぼめて登校する生徒が一人。
今日はこの学校の卒業式であった。
もちろん彼も卒業生のはずだが。
この学校には卒業出来るかどうかは当日に決まるシステムになっている。
学校は4年制で、彼らは10歳から通う。
だから今日卒業の資格があるのは、14歳になった生徒たち、と言うことになる。
彼は特別頭が悪いわけではない。
卒業する資格は十分にあるのだ。
しかし、彼は去年留年した。
「この日が、一番キライ…」
学校に入った彼が一番に向かう先は屋上である。
開けっぴろげの屋上から空を見上げて一人ごちる。
「どうせ、今年も留年なんだ…」
彼はふわふわとした真っ白な耳と、
やはり肌触りのよさそうな白い尻尾とをしょんぼりと下向かせて膝を抱く。
ここは魔法学校。
魔法使いに仕える猫を育てる学校。
「白い猫には魔力がない…」
代々、魔法使いに仕える猫というものは黒く、スマートなものであるべきとされていた。
もちろん、そんなものは迷信である。
その証拠に、彼は立派に魔法を操ることが出来る。
しかし、その成績をもってしても去年彼は留年という形で処理された。
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