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「あの部屋だよ。すごくね、優しいおばちゃんがいるの。クロスに紹介したいんだ」
ぴんと上がった耳に安心したクロスは、シロの言葉に耳を傾ける。
「みんなね、僕が白いから悪口言うけど、そのおばちゃんだけはね、優しくしてくれるんだ」
それを聞いて、こんな所にも、シロの居場所はあったのか…とクロスは安心した。
「すぐそこだよ!」
大きな扉へ向けて走り出したシロであったが、その扉が突然開き、中から現れた人物にぶつかると、
体の小さなシロは呆気なくひっくり返っってしまった。
「っ……ご、ごめんなさいッ…!」
すぐ謝りつつ顔を上げたシロは顔を真っ青にして凍り付いた。
シロがぶつかった相手というのが今日の卒業式の主役とも言える、
首席を指名したグラス・ハウアーだったからだ。
「ハウアー様っ!お怪我は!?」
後ろから可愛らしい容姿の黒猫が走って来る。
そしてシロを見るなり汚いものでも見るかのように、可愛らしい顔を醜く歪めてシロを罵倒し始めた。
「あっ…アンタ!ハウアー様にぶつかって来るなんて一体どういうつもりなの!?
今年も卒業出来なかったくせに、のこのここんな所に現れないでくれる!?」
ヒステリックに責められて、尻餅を付いたままのシロは立ち上がることも出来ずにガクガクと震えていた。
クロスは走って彼らの間へ入ると深く頭を下げて謝罪をする。
「うちの魔法使いが失礼しました。私が食堂へ急かしたものですから…。どうかご勘弁ください」
クロスの態度に機嫌を直したハウアーは、そのいやらしい顔つきを一層にやつかせ、シロを見た。
「真っ白で上等な猫だ。これなら魔法使いとしてでは無く、高く売れるのではないかね?
君もいい買い物をしたな」
耳打ちするように言ってその場を去るハウアーに、クロスは校長に見せた冷たい微笑みで見送る。
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