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卒業資格は2つ。
一つは、4年間教育を受けること。
もう一つが、自分の主人を見つけることであった。
彼は2つ目がどうしてもクリアできなかった。
彼の毛も、肌も真っ白なその容姿に、使いを選ぶ魔法使いたちから倦厭され、無視をされ続けてきた。
時には酷い悪態をつかれたりもした。
「白くなかったら…せめて、灰色だったら…」
同じ理由で何度も涙を流すことには疲れていたけれども、
自分が一番認めてもらえないこの日が、彼は大嫌いだった。
悔しくて泣いていたことから、だんだんただ、悲しくて泣くようになってしまった…。
ふぅ、と息をつき、乱暴に目を擦って涙をぬぐう。
『ただいまから、第1058回エレマリアル魔法学校卒業式を行います。
卒業予定の生徒は、ただちに体育館に集合してください。繰り返します……』
非常に整った声の放送に、心が沈むのを抑えて彼は立ち上がった。
卒業式には、出なければならない。
自分を散々馬鹿にしたけれども、それでも彼らを見送ってあげなければならない。
自分以外の白い猫を嫌わないように、笑顔で見送らなければならない。
そのために、今思う存分泣いた。
彼は階段を急いで下りて行った。
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