母の記憶

5/11
前へ
/382ページ
次へ
父の暴力、家族として機能しているとは言い難いこの状況に、母は疲れ果ててしまったのかもしれないと思った それでも何も言わずに私を置いて出て行ってしまった事は、中学2年だった私にとっては相当なショックだった 帰ってきた父は母が家を出て行った事実を知り、呆然としていた そしてたった一言「出て行ったのか」とまるでこうなる事を知っていたかのように、そう小さく呟いた 居間にあるテーブルの前に座り込んでいる父を横目に、私は父に声を掛ける事もなく夕食を作り始めた 出来上がった料理をテーブルに並べると、父と向かい合って座り無言で夕食を食べた 初めてした料理の味はお世辞にもおいしいとは言えなかったが、空腹を満たせればそんな事はどうでも良かった
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加