母の記憶

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家を出て行った母にその真意を確かめる事はもうできないけれど、自業自得だと思う反面、父に同情してる部分もあったのだろう だから私は父にあえて何も言わなかったし、何も聞かなかった 翌朝、目が覚め居間へ行くと、そこにはいつもいるはずの母の姿がなく、父がひとりでポツンと座っていた 朝、母と顔を会わせる事はほとんどなかったが、それでもやっぱり母がいないのは不自然だった 母が居なくなって初めて寂しいと感じた瞬間だった 私自身まだそんな感情が残っていたんだと驚いた けれど一週間もするとそんな母のいない生活にも慣れ始めた 今となってみれば私は誰にも、実の父にさえもその寂しさを隠し、強がっていたのかもしれなかった
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