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「主役っていうなら、柊斗とお前でもいいんじゃないか?実力だってあるんだし」
急に後ろの入り口から声を掛けられた。
そこには、帰ったはずの荒木朔耶(あらきさくや)が立っていた。
「荒木、あんた何言ってるの?」
「お似合いじゃん」
「馬鹿!」
部室に入ってきた朔耶の頭を、美咲は叩いた。
「いって、暴力はんたーい!」
朔耶はいつもこんな調子で、美咲に突っかかってくる。
「もぉ、荒木がいると話が進まない。帰ったんじゃなかったの?」
「俺が居残りだって言ったから、待っててくれてるんだ」
こうして朔耶も加わり、3人で話を考えることにした。
中々いい案が浮かばず、頭を悩ましていたが、ふと美咲は何かを思いついて話し始めた。
「じゃあさ、主人公の女の子が、過去に酷い振られ方をして恋する事が分からなくなってしまったの。
で、その女の子を好きになった男の子がいるんだけど、なかなか告白出来なくて、時間だけが過ぎていく。
そして、ついに告白するんだけど、女の子はそれを断ってしまうの。
仲が良かった2人の関係がギクシャクし始めたとき、男の子が他の女の子と楽しそうに話しているのを見て、初めて彼の事が好きだったって気がつく。
なんてのはどうかな?」
長い説明を終えて、美咲は2人に意見を聞いた。
「ありきたり」
すぐさま朔耶から、厳しい一言をくらった。
「でもまぁ、土台はそれで良いだろう。少し手を加えればOKだ」
その後すぐ柊斗が賛成してくれて、今日の居残りはこれにて終了となった。
「2人共、ありがと。後は俺が書くから」
帰る準備をして部室から出ると、外はもう真っ暗だった。
時刻は7時半を回っている。
「うわ~、暗~い」
春といえど、夜はまだ冷え冷えとしていて、美咲はぶるっと身震いをした。
「お前、一人で大丈夫か?」
珍しく心配してくれる朔耶の姿が、あまりに似合わなくて、彼女は小さく笑った。
「ふふ、荒木が人の心配するなんて珍しいね~。私なら大丈夫!
じゃ、バイバイ」
大きく手を振った後、2人とは反対方向へと歩いていった。
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