第一章

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出会ったのはいつだっただろうか…まるで遠い昔のような、おぼろげな記憶だ。 散々に美化されてしまっているだろう。 しかし、ここに書きとどめることを、お許し願いたい。   それは、まだ僕の年齢が一桁か二桁になるかならないかの頃…たしか話しかけたのは、彼女からだった。 他愛のない、その時好きだった漫画の話。 そんな他愛のない話から、僕の全てが始まった。    恥ずかしい話だが、まだその頃の僕は、異性と話したこともまともにないような、ただの子供だった。 異性側から話しかけられたようなことは、ほとんど初めてだった。   当然の結果…といってはなんだが、その時から、僕は彼女に好意を抱いた。 初恋と言うのだろうか…幼い僕が初めて抱いた、淡い恋心。 その時の僕にすら、この出来事が意味を持つことになるとは、想像もつかなかった。   それからは、たいして話もしないような仲だっただろうか。 僕が、恥ずかしがっていたのかもしれない。 見かけると、目で追ってしまう。 その程度のことしかできなかった、子供だった僕。 話しかけられなかったのも、無理のないことだったのかもしれない、と、今になって振り返る。   それから少し経ってから、僕は彼女に薦められた漫画を買った。 そこから、僕はそちらの方向に向かってしまい―平たく言えば「オタク」化し―そのまま、月日は過ぎていった。
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