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燦々と雨が降ってた。雨が傷口に染みて痛い。
「痛てぇ…」
雨に濡れながらそうつぶやいた。生まれてからもう何年。オレはいつからこんな生活を続けているんだろう…
生きるためならなんでもする。そう決めた。だから今さらこんな雨…痛くもないはずなのに。
「…痛くないですか?」
そんなことを悶々と考えていると急に少し声高い声が自分の頭上からふってきた。何かと思い顔をあげれば、自分よりも幾分か若い綺麗な金髪をした少年が傘を持って立っていた。
一瞬唖然とするしかなかった。まさかこんなガキが、こんな血まみれでズタボロな姿なオレに声をかけてくるなんて思わなかったんだ。
「ンだよ、テメェ…見せもんじゃねぇ…!」
目付きを悪くし、きつい言葉を言い放つと少年は一瞬肩をビクッと震わせた。今にも泣き出しそうな顔をしながら。
「で、でも…い、たそうです……」
「っせぇーよ。同情か?ざけんなよ、ガキが。テメェみたいなお子様はさっさとママんとこ帰って寝ちまいなッ」
そういわれるとさらに少年は脅えた様子を見せ軽く後退りをする。
ほら、恐えーんだろ。だったらさっさと帰ればいい。最初からこんな屑みたいなオレに話しかけんじゃねぇっつうの―…
そんなジャックの考えはもちろん少年には伝わらない。しかし少年は脅えた身体をなんとか落ち着かせ、ゆっくりとジャックに近づき、そっと傘を渡した。
「風邪…引かないでください…」
そういい残すと雨のなかばしゃばしゃと音をたて走って消えていった。
オレは唖然とした。
なんでだ?なんでこんなチンピラみたいなオレの心配をするんだ…?
わからねぇ。
わからねぇ。
そんなこと考えているうちに雨はいつの間にか、からっとあがっていた。
オレは『セシル』と下手くそな字で名前が書いてある傘をぼーっと眺めながら、あいつが笑った顔は今の空みたいに清々しくて、優しいのかなんて馬鹿なことを考えていた…。
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