─導き─

3/5
前へ
/17ページ
次へ
「あ、大丈夫です!」 手を引っ張って、助け起こした相手はすごく綺麗な人…。 鮮やかな紺青色の髪は、肩まで届くかどうかの長さで、外側に向かってハネている。 薄い藍色に緑がかかった瞳は、雪のような白い肌によく映えていた。 まるでどこかのお嬢様のように手を口元に当て、柔和な笑みを浮かべる。 「良かった…お怪我をされたらどうしようかと」 「フツーはさぁ、まず弟の心配するもんじゃないの?」 「するんじゃないのぉ?」 ぶつかった少年が立ち上がって埃をほろいつつ、文句を言う。そんな少年の言葉を繰り返して尋ねるのは、彼と同じぐらいの歳の少女だった。 「なぁ?歌音(かのん)」 「ねぇ?詞音(しおん)」 同時に首を傾げる。鏡のように向かい合う二人は、背丈も顔も似通っていた。 「いや、無理だ無理。あるは、可愛いのが最優先事項だし」 続いて現れたのは、背が高めの男の子。 「当たり前です!詞音は死ななそうですから、可愛い人の心配するのは当然でしょう」 「そ、そんなことないです!」 慌てて、首を横に振ると今度は彼女が首を傾げた。 「あなた…光ちゃん…?」 「えっ?」 いきなり名前を呼ばれ、思わず聞き返した。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加