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剣と魔法。人と魔物の共存する世界『エルディア』。その大陸である『ケルブ・レイ』は、かつて、一つの国によって統治されていた。
国は一時の栄華を誇っていた。が、世代交代を繰り返す度に、皇室は腐敗し、終には東西南北の主要都市で、大規模なクーデターが勃発した。
腐敗しきっていた時の皇室に、そのクーデターを鎮圧できる力は無く、次第に戦線は拡大して行き、東西南北の主要都市は国へと姿を変えた。
その時から、ケルブ・レイは東西南北中央の五ヵ国が凌ぎを削る時代にー則ち、乱世にー突入した。
ーそれから三年後。
ケルブ・レイの中央に位置する『ウェル・スフィア皇国』。ここは大陸が統治されていた頃、首都として機能していた場所である。
大陸が五つに分裂した今、栄華の象徴となっていた首都は、全国家中、最弱の小国となり変わっていた。広さとして、都市四つ分と言ったところか。
その狭い領土の中央に皇都を置き、東西南北に皇都を守護する要塞を構える。領土内に山や川と言った自然が少ないこの国は、四つの要塞のどれかが陥落すれば、いとも簡単に占拠されてしまうだろう。
そんなウェル・スフィア皇国は、今日も襲撃を受けていた。朝早くから、首都に援護要請が飛び込んできたのだ。
相手はウェル・スフィア皇国の南に位置する国『トランクルド』。全国家で唯一『グリフィンライダー』と呼ばれる空戦部隊を所持し、機動戦が得意な軍だ。
伝令兵曰く、早朝の奇襲と言うこともあり、南要塞の守備部隊は苦戦を強いられているらしい。
皇国軍の軍師は、南要塞の戦局を変えるべく、一人の将軍に出陣を要請した。
「朝っぱらから南に走れってか?ったく。めんどくせぇなぁ。」
自室で眠っていたその将軍は、文句をこぼしつつ着慣れた黒衣と蒼い軽鎧を身に付けていき、鞘に納められたバスタードソードを帯剣した。
「しゃーねぇなぁ。行ってやるか…。」
嘆息混じりにそう呟き、自室を後にする。 その背中を見送りつつ、軍師は勝利を確信していた。
なぜなら彼は、この国に置ける『戦いの切札』なのだから。
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