†第五楽章†

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夕方になると婦人は自分の家で夕飯をしようと少年誘った。戸惑いながらも婦人の笑顔には逆らえなかった。そして無言のまま歩き、やがて白い家に着いた。婦人は少年を招き入れると、すぐ夕飯の用意をするからとテーブルにつかせた。少年は夕飯に招かれたのは初めてだった。それから部屋を見渡した。白い壁には絵が飾られ窓際にはピアノが置いてあった。白い家と白い壁を見て、あの白い猫の中に居るようだと思うと悲しさや、優しさや、寂しさ、不安、安心を覚えた。そして一点を見つめ、あいつが現れてから少しづつ何かが変わっていったと思うと…やりきれなさを感じたー。婦人が夕飯を運んでくる足音でハッと我に戻ると同時に、いい香りがした。簡単な物だけど…と照れくさそうに笑う。手料理を食べるのも初めてだったからそんな婦人をみて愛おしくて涙が出た。するとベルがなった。誰か来たようだ。少年に緊張感を漂わせ表情が堅くなった。婦人が向かい、入り口に連れてきたのは婦人の母親だった。そして婦人は少年を息子だと紹介すると、少年はハッキリと言い放った言葉に驚いたし、婦人の母親はじっと此方を見ると溜め息をついた後、急に泣き出した。少年は困惑した。婦人も驚いていた。そして婦人をテーブルにつかせると婦人の母親は少年と婦人に謝った。婦人は問うと、少年を誘拐したのは私だと告げた。資産家の娘が見ず知らずの男の子共を宿したと知って、その子がいなくなれば娘はこの男との結婚を諦めるだろうと考え誘拐されたとして私が捨てたのだとー…。ずっと後悔してたんだと…死ぬ前に謝りたかったのだとー…。婦人は唖然とした。そしてこの空気を裂いたのは少年だった。俺は息子じゃないかも知れない。証拠もないのだから。謝るなら婦人に誤ってくれと。そして婦人は、あなたは私の息子。母親の私が言うんだから間違えなど無い。そして、あなたは私と暮らすの、これまで離れてた分、ツラい思いをさせた分、これから私と一緒に生きるの。と言った。少年は、母と云う強さや優しさを見た。
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