†第二楽章†

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目の前の事で精一杯で誰かに頼る事もない生活。あまりにも腹がすけば、追われた時、逃げ切れない事もわかっていた。遠くで猫や犬が餌を貰っていれば走っていき餌を奪い平らげた。犬畜生にも劣る行為を安易にこなした。そして毎晩、行き止まりになったレンガの路地裏で壁にもたれた眠った。痩せた膝を両腕で抱え込んで体を温めながら。少年は常に痩せていた。お腹いっぱいに何か食べてみたかった。夢なんか見ない。考える事は食べる事、生きる為の技だけ。優しさに触れた事も勿論ないしどんな仕打ちを受けても泣かなかった。無駄に体力を使えば死んでしまうかもしれない。何度か追い剥ぎをして捕まった、その中で一度、気絶するほどの暴行を受け恐怖を味わった時以来、死がとても怖くなった。沢山の死体も見て来たからこそ生きる欲望は人より強い。猫の毛を見て毛皮の相場を考えた事もあったが、それはやらなかった。生きる命は自分にもあったから殺す事は出来ないし、死がやはり怖い。金が欲しい。ここ最近は…体も売れずにいた。痩せすぎていたから…。泣き出し、すがるほど生きたかった。幸せなんか望まない。夢なんか見ない。贅沢過ぎて届かないから。涙は流さない、だから毎日毎晩心で泣き、悲鳴を上げていた。いつの間にか眠っていて、気が付くと隣に昨日追い払った猫がまぁるくなり眠っていた。独りで眠った事しかない少年の心はポゥッと灯りが灯ったように涙を一粒零し安心したように今度は深く眠った。
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