†第三楽章†

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少し眠ると目が覚めた。猫はまだ寝てた。少年はじっと猫を見つめた。一緒に眠ってくれてありがとうと猫の頭に手をやると猫は驚き数秒もしない間に逃げていった。その方がいいーまた、自分みたいな奴に殴られるかもしれない。なら…人間になんて慣れない方がいい。少年は立ち上がるとまた盗みをしに行く。今日は上手くやれる気がしてた。街へ出て店や人を物色し、1人の婦人に目を付けた。婦人は中年ほどで見るからに鈍そうかでカモにするには絶好の獲物だった。そして婦人の後を付けると、角を曲がった瞬間にバッグを引ったくり全力で走った。婦人は驚いた様子で追って来なかった。上手くいった。最高の気分だった。物陰に隠れるとバッグを開け財布を出し金をポケットに詰めた。他にはカメオのペンダントが1つ。それを反対側のポケットに詰め、表に戻るとすぐに店へ行き6ペンスのパンを買い路地裏へ戻った。そこに先客がいた。あの猫だった、少年は初めての仲間にパンをやった。痩せた白い猫はパンに食らいつくと誰も居ない所へ逃げていった。少年は誇らしい気分だった。それからペンダントを売りに街へ戻ると一番大きな買い取り屋へ入り主人に買い取りを願い出た。主人にペンダントを預けると奥に通通され待つようにと言われソファーのある部屋で待った。15分程して主人が婦人を連れて戻ってきた。心臓が止まる気がした。婦人は警察に行き街中の買い取り屋に問い合わせていたのだ。ペンダントは開く仕掛けになっていて婦人の亡くなった子供の写真を入れてあったのが特徴だったらしい。迂闊だった。婦人は怒った素振りもせず少年の手を握り、いつからこんな生活をしているか問いかけた。そんな事、覚えてもいないし、余計なお世話だった。そう答えると今度は、両親やどんな暮らしをしているかを問いかけてきた。少年は苛立った。同情なんかまっぴらでお前達が想像も出来ない犬畜生の生まれだと罵声を浴びせた。婦人は驚き、主人は少年を殴ろうとすらした。婦人はペンダントを取り出して開くと、愛おしそうに写真を眺めながら私の息子は四歳で誘拐され殺されてしまったと話し写真を少年に見せた。そこに移った子供は自分だった。
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