†第四楽章†

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何が何だか分からなかった。頭がぐるぐると回った、そして少年は一目散に逃げ出した。怖かった。親なんていないっ、瓦礫から生まれた俺に、そんなもの絶対いるはずはないっ!少年は怖かった。人の優しさに触れ暖かさが怖かった。汚いものばかりの生活には綺麗過ぎて生ぬるくて違和感を感じ、独り生きるには不必要だった。路地へ戻ろうとした時、道端で倒れた白い猫がいた。駆け寄り覗くと馬車にひかれたように足がつぶれ体は血が乾いて揺れていた。もぅ息は無かったー…。猫を抱き上げると誰の目も気にせず路地に連れて行き胸に抱いて泣いた。沢山泣いた。そして少年は言った。お腹いっぱい食べたかったろな…暖かいベッドで寝てみたかったろな…優しくされたかったろな…けどお前は1人じゃない。幸せ者だ、俺達みたいな野良でも、こんな時泣いてくれる人がいて良かったろ?。少年は静かに…静かに冷たくなった猫の体を撫でながら声を殺した泣いた。そして見晴らしのいい丘にその体を埋めてやった。ボーっと空中を見つめたまま街へ戻りフラフラ歩いた。今日は本当についてなかった。今日1日の記憶がなくなればいいと思うとまた涙が溢れた。あのっ…っと誰かに呼び止められ振り向くと婦人がいた。少年は涙を拭き、無視して歩き出したが婦人はそれを許さなかった。婦人は心配気な顔をすると少年を抱きついた。少年は動揺した。俺の服が見えないのか?血まみれだぞ?突き放そうとしたが、それも許さなかった。少年はだんだん悲しくなり、悔しくなり虚しくなり嬉しくなり感情がグチャグチャになり泣いた。初めて誰かにすがり泣いた。それから公園に移動し婦人と話した。今までの生活の全て。仲間の猫の事も全て。そして、バッグを盗んだ事も謝った。婦人は快く許してくれた。そのおかげで、あなたに逢う事が出来たからとー。婦人は少年を優しく見つめ続け、婦人はある資産家の産まれで、今は1人暮らしをしている事も、子供と生き別れになった時の事も話してくれた。そして、一緒に暮らそうと言う道を与えてくれた。少年は戸惑った。本当にこの婦人の息子かも分からないし、こんな卑しい自分を受け入れてくれるのか…
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