第一章 霊の見える少女

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 運命の人と出会った時、電流が走るのを感じることがあるという話を聞いたことがある。それが本当であるのなら、俺はその運命とやらをどう受け止めるべきなのかが分からない。運命とはきっと一度のはずだと思うから。それなのに俺は、今までに2度もその衝撃を受けた。  1度目は小学生3年の、クラス替えの時だった。運命を感じるにはあまりに幼い年頃で、まだ恋愛のいろはも知り得ないのに運命の出逢いを感じるだなんて馬鹿げているとは思う。  しかし、確かに俺は電流を受けたような衝撃を受けたのだった。  あいつは酷く暗い表情を見せる女の子だった。顔は確かにとても愛らしく、周りのませたガキが好きだの可愛いだのと吠えていたのも憶えている。  あいつを見た瞬間涙がでるのを堪えられなかった。あいつもまた、大粒の涙を流していたのは忘れもしない。とても悲しくて、辛くて、そして嬉しかった。そいつの名前は、天津美月姫と言った。天津がその時のことを憶えているかは、今では知れない。  天津は当時暗くて、いつも何かに怯えたようにして1人で過ごしていた。だから、初めはその容姿に惹かれていた連中もそのうちに寄り付かなくなった。俺はそれが見ていられなくて、つい「暗くしてるから1人になるんだよ」と言ってしまった。子供ながらの、配慮に欠ける発言だった。
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