第一章 霊の見える少女

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 「何も知らないくせに」と俯いたままあいつは言った。 「本当のことだろ。暗くしてたらいつまでも友達出来ねーよ。」  当時は自分なりに考えていたつもりだった。今思えば気遣いのない、無神経極まりない台詞だけど相手に対する不満や文句で言ったわけじゃない。親切心とも違う。ただ、本当のあいつは、こんな暗いやつじゃないとどこかで知っていた。1人でなんていないでくれ、という俺なりのエールだった。  「放っておいて」とあいつは当然ながら怒ったように言った。その時の俺には相手に自分の気持ちを伝える方法を知らず、相手の怒る理由も分からなかった。 「やだ。笑ってろよ。」 「どうしてそんなこと言われなくちゃいけないの」 「笑ってればいつか仲良いやつ出来て、本当に笑えるようになるから。それまで俺が友達でいてやるから」ドラマで知ったセリフなのか、漫画やアニメの影響から出た言葉だったのかもしれない。恥ずかしい言葉だ。でも、今でもそれが間違った考えだったとも思わない。  その時のあいつは声も出さずにただ泣いた。そして俺たちは友達になった。それから、俺の言ったことは高校生になった今、現実になった。
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