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そいつは、まるでモデルか女優かを思わせるような美女だった。間違いなく、一般的な美人とは違う。身長は高く、制服を着こなす姿もまるで他の女子生徒とも違っていた。長身で、顔は小さく、手足は長く、日本人離れしたスタイルだった。細身だが胸や太腿の肉付きには艶かしいものがあった。
そいつの姿を見て全身に電流を走らせたのは俺だけではないだろう。それでも、あの涙が溢れ出しそうになるほど胸が熱くなる衝撃はそれとは違うだろう。
少し大人になった今、流石に本当に涙が溢れることはなかった。
そいつは庇護欲をくすぐる天津とは違い、奔放だった。美人という自覚がまるでないようで、どこかあっけらかんとしている。どこで惹かれあったのか、そいつと天津はいつも一緒にいるようになった。天津にとって、特別な存在になったのは間違いなさそうだ。そう、子供の頃俺が言ったことは本当になった。
そいつは俺にとってもまた特別な存在だった。天津の時と同じように、出逢った時の強い衝動は同じだったが、どこか違う感情があった。
そいつは初めて目を合わせた瞬間、硝子のような瞳を俺に向けて「あれ?あんたどこかであった?」と声をかけてきた。
「そんな気がしないでもないけど、初めましてだと思う」
俺は答える。出逢っていたのなら、この顔を忘れることなどないだろう。
「そう…。変なこと言ってごめん」
「いや…」
そんな会話が不思議で、どこか懐かしさがあって仕方がなかった。胸がさわさわするのを抑えられなかった。
「あたし、草薙。草薙桜。」
「あ…。俺は風太。風見風太」
俺が応えると、そいつは「この学校に入ってよかった!」と笑った。どういう意味かは分からなかったが、くすぐったい気持ちになった。
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