第一章 霊の見える少女

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 俺と草薙は1年目の時に弓道部に入部した。口裏合わせしたわけでもなく、偶然希望した部活が重なっただけだったが仲の良い相手が同じ部活なことは嬉しかった。ものすごく。  部活では走ることもあったが、ダラダラとランニングするだけで全速力で走ることなどない。ただ、体力があるやつだなぁ、くらいには思っていた。ある日、練習も重ねていないうちに試しにと先輩に的の前に立たされた。今の実力を知らしめて練習の必要性を享受するつもりだったのだろう。だがそんな先輩の思惑をよそに、草薙は弦を弾いたら2本目で矢を的に命中させた。弓を引く姿勢も様になっていて弓道の経験者かと思わされる程だったが初心者で間違い無いという。先輩も入部生たちも騒めいていたが、それでも弓道の才能があるんだな。くらいにしか思っていなかった。  体育ではうちの学校は自由にバレー、テニス、サッカー、野球の4項目の内から好きな競技を選んで好きにしていいくらいにしか運動はしていない。運動部と文化部ではレベルに違いが出るので出来るやつは加減しながらやるし、単に体を動かすお遊びだ。初めのランニングと準備運動を含め、ダラダラとしていても文句を言われないものだから全力で取り組む生徒はほとんどいなかった。だから体育で草薙を見ていた連中も、単に運動神経がいいな、くらいにしか思っていなかったと思う。  だが体育祭のリレーの時、草薙の人間離れした運動能力を知った。男子リレーの後、女子リレーだった。リレーの開始の爆竹がなった瞬間、あいつは周りの女子より数歩先を走っていた。1秒後には明らかな差をつけていた。見ていた全員が目を丸くさせ、唖然としていた。しなやかに飛ぶように走る姿に誰もが目を奪われた。多分、男子の1番足の速かったやつよりも速かっただろう。  他にもある。校内で冗談ではないかと思うほど素行の悪い先輩がいた。悪い噂ばかりで、高校生に出来る範囲での悪いということの全てをしていたのではないかと思う。よくこれまで少年院に送られなかったと思うほどだ。
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