第一章 霊の見える少女

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 ねぇ…。  私、何か悪いことした?  どうしてそんな目で見るの?  嘘なんかついてないのに…  天津 美月姫(あまつみつき)は子供の頃からおかしなことを言う女の子だった。  何も無いところをじっと見つめるものだから「何かしたの?」と周りの人間が聞いてみると、「あの人がじっとこっち見てる」と答えるのだ。奇妙なものを見るような彼らの残酷な視線は美月姫にむけられる。  周りの人間は、「馬鹿馬鹿しい」だとか、「不気味だ」と言って笑った。子供ながらにその笑みの下の表情は美月姫にも読み取れた。反応は様々ではあったが、美月姫の発言を良く思う人間は1人もいなかった。  おかげて、美月姫はいつも1人でいることが多くなった。幼児期頃には自分から1人でいることを望んだのだった。  自分がうそつき呼ばわりされ、奇妙な目で見られるとしたら、普通の人間だったら落ち込んだり、ひねくれたりするものなのかもしれない。それを考えれば美月姫は大分前向きだった。それは風太という唯一の友人のおかげでもあったのかもしれない。 ある日、彼が美月姫に笑えと叱責したのだ。そうすれば友達ができ笑えるようになる、それまで俺が友達でいてやると言うのだ。おかげで、今の美月姫がある。彼の存在は美月姫にとってとても大きい。  美月姫は話しかけられればいつも笑顔でいたし、小学生のある時からは1人でいることよりも円滑に世を渡るための技も身に付けていた。
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