第一章 霊の見える少女

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「私には何もみえない。そんなものは見えていない」  自分にそう言い聞かせ、変なものが見えてたとしても何も言わずただ黙っていた。そうすることで周りは美月姫を奇妙な目で見ることはなくなった。周りから見て一般的な普通の女の子にしか映らないようになった。  それでも彼女の中にある闇はぬぐいきれはしなかったが、せめて周りの人間が自分を普通の人間として扱ってくれるのであればそれだけで心持は違う。  彼女の普通ではない点の一つとして、彼女の腕には蛇の痣があった。まるで刺青(いれずみ)のように、くっきりと浮かび上がる痣。物心がついたころに、それが自分にしか見えていない痣であることを知った。今でもその不気味な痣が気になり、怖くなることがあった。そしてやはり、一番はごく当たり前のように周りには見えないものが彼女にのみ見える点だ。それが死者であることは彼女自身気が付いていた。  美月姫は見た目はごく普通の女子高生だ。肩まで届くぐらいの短い髪がよく似合う。現在高校2年生。世の中のわたり方を知った彼女は、常識もわきまえ方を知り、謙虚で友人も多い。教師から見ても素行がよく何一つ問題を起こさない模範的な生徒だった。だが、本当の美月姫を知って美月姫を認めてくれる人は数少ないであろうと、表面上には出さずとも、自分の殻に閉じこもっていた。  それがたとえ風太であっても、美月姫は真実を告げることができなかった。風太は論理的で現実的なことを見ている性格であったため、美月姫の秘密を容易に信じることは難しいと思ったのだ。
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