第一章 霊の見える少女

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 だが風太の他にも、美月姫の隣にいようとする変わった少女が現れた。彼女は出会ったばかりだというのに容易に彼女の壁の内側への入ってきた。すべてを話すことはできなかったが、殻に閉じこもっていても寄り添いずっと付き合っていてくれるであろうと思える友人だ。なにより、とても魅力的で美月姫自身が一緒にいたいと思える。 「お早う、みぃつき」  焦げ茶色の髪をふわふわとウェーブさせた女の子が美月姫の肩を叩いた。輝かんばかりの美しい顔の少女が眩しく、人の視線を引きつける。  美月姫は自分の肩を叩いた少女に、親しげに微笑んだ。 「桜、おはよー」  草薙 桜(くさなぎさくら)はサバサバとした男勝りな性格で、面倒みのいい女の子だ。高校に入学してから知り合い、ようやく1年経ったばかりの付き合いだが、まるで昔からお互いを知っていたかのように仲良くなった。美月姫自身それが不思議で仕方がない。出会った瞬間に、懐かしさすら感じるようだった。  学校でも美人と評判の女の子で、家も大きく経済面でもかなり裕福であると考えられるのだが、美人やら金持ちやらとみせない性格をした桜が美月姫は大好きだった。  紺のセーラー服に、胸にはリボンの制服を着て2人並んで歩く。薄い桃色の花を咲かせた木々が歩道に並んで植えられていて、その花びらを陽の光で白く輝かせた。まだ衣替えするには時期は早いが、今年はブレザーを着ていなくても日中はカーディガンだけで寒さを紛らわすことができた。夕方になってようやく肌寒さを感じる程度だ。制服の袖から覗く華奢な桜の腕が白く美しく見えた。 「どうして今日はこんなに早いの?」  美月姫は桜に訊ねた。  周りの学生にとったら対して早い時間でもなかったが、いつも遅刻ギリギリに登校する桜にしては随分と早かった。 「んー…気分?何だか朝から寒気がして目が冴えちゃってね。何となぁく美月姫に会いたかったんだよねー」  桜は少し茶化すように言う。
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