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味方のいない森の中で見つけた心強い味方。
逃げきれる自信も希望もとうに捨てていたが、彼女1人の存在は心強い。これで大丈夫だと彼女は肩を下したが、すぐにそれを疑う。なぜ、彼女はここにいるのだろう、と。そしてなぜ、村人たちは彼女の命令を無視するのだろう、と。
「大丈夫…!何があったの?早くこっちに…」
少女がそう言いかけると同時に、「いたぞ―――!!」と村人の大きな声が響いた。
見つかった、と思った瞬間美鈴の頭の中は真っ白になった。
美鈴も、美鈴のために駆け付けてくれた美しい少女もビクッと体を震わせ、近づいてくる村人を見た。
少女は「どういうつもりなの!止まりなさい!」と村人に怒鳴る。村人たちは彼女を見つけて一瞬躊躇いの表情を作ったが、何も答えずに美鈴に殺意に染まった目を向けた。
美鈴は怯えた表情を作ると後退った。崖の淵の肌けた岩場を踏みしめた左足に、苔の水を含んだ感覚がした。気がつけば苔で足を滑らせていた。
美鈴はバランスを大きく崩した。
まるでスローモーションがかけられているかのように、ゆっくり時が過ぎるのを美鈴は感じた。
深い深い暗闇の中に吸い込まれていくような感覚だった。体がひどく重たく感じる。
その長く感じる一瞬の間に美鈴の頭の中を駆け巡る思いは、大好きな家族、友達、大切な人との思い出と約束。
美鈴はぎゅっと目蓋を閉じた。
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