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少年は呆然としてその場に膝をついた。瞬きすることさえも忘れ、体の力も無くなくしてダランと腕を垂らした。絶望のみがそこに存在した。
「な…んで…」
少年の目から涙が一筋溢れた。零れ出た瞬間は温かさのあった涙も、頬まで伝うと冷たくなる。風が耳の横で裂けるような音を立てた。
「…美鈴…。…絶対守るって約束したのに……。…約束………。」少年は力なく言う。
無言でいた2人だったが、少女は静かに「どういうことなの」とつぶやいた。
やがて、その声に鋭さが増し、「どういうこと…ねぇ…。美鈴が呪いの原因って…どういうことなの…?」と少年に問い質す。
少年は少女の問いに何も答えることはなかった。
「……この村は…悪魔たちの住む村だ…」少年はそう言ってふらふらと立ち上がった。「まただ。またそうやって、あいつを俺から奪っていく」彼はそう言って木の幹を殴りつけた。少女は驚いて思わず頭を覆った。大人3人で輪を作っても手が回らない太い幹が、大きな音を立ててその体を揺らしたからだ。ゆっくりと木はななめを向いていき、葉が落ちる。
少女はただ混乱し、その場から動かなかった。 彼が今起した行動は、誰しもに衝撃を与えることであった。が、今はどうでもいいことだ。少女の胸に残るものもまた、絶望だった。深い谷底を見て、自分も身を投げ入れてしまお うかとすら思った。
そして彼は、そして、少女は、この村は、、、、
やがて時が経ち、ある噂が風に運ばれていく。ある村に住む人間たちが怪物によって皆殺しに合ったと…。
想いだけをその場所に残して……。
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