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「さようですか。たった今お起こししようと思っていたところなのです。台所をお借りして昼食をご用意させていただきました。そろそろ何かお召し上がりになってはどうかと」
「うん、ありがとう……」
それを聞くと、クレスティル・レタリュース、通称クリスは満足気に笑って作業を進めた。
しばらくぼんやりと彼女の後姿を眺めていたが、はっ、として浩司はいっきに眠気が吹き飛んだ。
「な、なんで君がここに!?どうやってこの部屋に入ったのさ!鍵かかってたよね!?」
「あ……その事でしたらお構いなく。私が部屋に入る時はしっかり施錠されてありました。安心して下さい」
「全く安心できないよ!問題はクリスがどうやって入ったかでしょ!?」
「もちろん、そちらの玄関を開けてです。ですからご安心を。ピッキングで容易に解除されてしまうような鍵などすぐにお取り替え致しますので」
「と、いうことはクリス……?」
「はい。幾度もお呼び申したのですが、返答をいただけませんでした故、こちらから解除致しました。問題あったでしょうか?」
浩司は布団にかばっと突っ伏した。
何をどうやったのか、アパートの鍵をクリスは糸もたやすく捩伏せ、空き巣顔負けの技で寝ていた浩司の部屋に潜り込み、金品を物色する……代わりに、ご飯をこしらえたそうだ。
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