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浩司が最初この姿の彼女を目にした時、まるでぼろっちいアパートからイギリス上流階級の屋敷へテレポートした錯覚を感じたくらいだ。
これを着て仕事をする女性を主に『コスプレイヤー』もしくは『メイド』と呼ぶ。
そしてクリスの場合、まがい物にあたる前者ではなく、後者の最前線にいる女性であった。
そう。数日前から、クリスは浩司のメイドとして働いているのだ。
当初は家業上だけのパートナーだったはずが、幼き頃の約束とかでこうなり、どういうわけか頼まなくとも朝はニワトリより早く、夜は毎日遅くまで浩司のお世話に励んでいる。
部屋もクリスが来てから見違えるほど綺麗になって、実際部屋を迷ってしまった。
その仕事ぶりはいいなめないが、物申したいのは服装である。
浩司のメイドでいる間ずっとエプロンドレスなのだ。俗にいうメイド服。
浩司は布団から這い出ながら、
「クリス、もし春日学園の生徒がこのアパートに済んでたらどうするつもりだったの?大変な騒ぎになるよ?」
彼女は鍋の火を調節し、心配ないとばかりに笑った。ちゃっかりメイド服が様になっている事はお分かりいただけよう。
「そのことでしたら大丈夫です。事前に住人全ての個人データを調べたうえ、春日学園在籍者および関係者が住んでいないことを承知してから挨拶に伺いましたので」
「そ、そうじゃなくて、俺が言いたいのはもっとクリスは先生である自覚をしてくださいってこと!この部屋に出入りしてるのが知ってる奴に見られちゃマズイだろ?だから…その、あんまそういう目立つ格好は止めたほうがよくないかな?」
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