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「それは出来兼ねます」
「どうしてさ」
「……浩司様。私はあなた様のパートナーや先生である以前に、使用人として、節度ある態度と衣服で業務に臨む所存です。ですからこの衣服は忠誠心の表れでもあり、証でもあるのです」
きっぱりと彼女は宣言した。目の光りが意志の強さを物語っている。
「他人がどう思おうと、御主人様は胸をお張りになって下さい。人を従えるのは偉大なことなのですから」
「……あー、なんか頭痛が……」
「浩司様!?」
ふと頭を押さえてみたら、クリスは跳ぶように寄って来て介抱をはじめた。自分の腕で浩司の身体を支え、横に寝かそうとする。熱を計るためか額をくっついた。
「頭痛でしたら横になられたほうがいいです。このまま病院へお運ぶしますから。ん!ちょっと熱が……」
「だー!!ごめんごめん、冗談だよ、ジョーダン!」
「冗談?では頭痛はしないのですか?今の熱は?」
「なんでもないなんでもない!大丈夫だから……クリスはなして」
クリスは軽い溜め息と共に安堵していた。本気で心配したらしい。ゆっくりと自分の身体を浩司から離した。
「……ならいいのです。ですが、そういうご冗談は以後お辞め下さい。私は本気にしてしまう質なので……」
「分かった。そうするよ」
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