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そうでもしないと、ある意味病院送りにされてしまうところであった。
クリスはそっと胸を撫で下ろすと、台所へいった。小さなちゃぶ台をさげて戻ってくる。
「それはそうと、お食事の用意が出来ました。温かいうちにお召し上がり下さい」
台の上に一人前の料理があっという間に配膳された。どれも温かそうな和食である。
ご飯、味噌汁、ぶりの照り焼きに玉子焼き。茶碗蒸しまでついている。独り身にしては豪華絢爛フルコースである。
クリスが浩司の食事を仕切ったことによって、食料バランスにも反映されていた。これはこれで満足に毛も生えた感じだ。
浩司が机の前に座ると、クリスは熱々のご飯を茶碗にもった。
「お口に合えばいいのですが」
「いただきます」
ぶり照りに箸をつける。
醤油の香ばしい匂いと焼けた魚のうま味が絶妙な風味となって舌に味わいをもたらす。専門家ではないのでこれ以上どうとも言えないが、最高に旨かった。
「美味しいよクリス」
「はっ、ありがとうございます。そう言っていただける事がなによりの褒美ですから。さあ、沢山食べて下さい。おかわりもごさいますので。いまお茶もお注ぎ致しますね」
「ありがと……。で、クリスは食べないの?」
「私は後ほどいただきます」
己は後方で給仕に徹し、主人の食事は快適に。がクリスのモットー、やり方であった。
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