依頼人は同級生 『前編』

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「さっきよりかは断然いいよ。これからもこれでよろしく」 「……かしこまりました。御主人様」 彼女は嬉しそうに顔を綻ろばせた。 こうして向かい会っていると新婚さんみたいな雰囲気がしてくる。なんてことは口にしないでおいたら、クリスが代弁してくれた。 「夫婦のようですね」 「っば!?な、何言ってるんですか!?」 恥ずかしげに彼女が言う。 「浩司様には、そういう思考はございませんか?」 「うっ、それはその……。クリスが俺なんかに言う言葉じゃないかと……。そもそも、君を呼び捨てにするのも俺は」 「ここでは教師と生徒の関係ではございませんと、草創に申したとおりです。気になさらないで下さい」 「……でも」 「それとも……。いえ、私とでは浩司様も嫌ですよね。大丈夫です。私はずっとあなた様の使用人ですから。今のは聴かなかったことにして下さいませ」 「はぁ……」 言葉を濁したようにしてから、クリスは少し減った浩司のお茶を注いだ。 よくわからなかったので、彼女の言う通りにしておこう。先生の指示にも従うべきだ。 クリスはメイドという肩書の他に、春日学園の教師という仮面も持っているのであった。
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