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浩司達の副担として入ってくるや連日祭りのように男子生徒は大喜びし、クリスは彼らの心を文字通り鷲掴みにしてしまった。
それはクリスがずば抜けた美人であるのも由縁になるが、担当している英語の授業方針にも理由がある。
前任教師は教育をただ生徒達になすりつけていたのに対し、クリスは生徒自らが学びたくなるような環境を作り上げた。
映画の台詞や洋楽を教科書がわりにしたりと、若者に身近な英語で教授をはかったのである。
これには生徒も興味を持ち、進んで理解を求める者が著しく増加し、学力向上がおおいに予測された。故に女子生徒からも慕われ、その人気は全校生徒に及ばんとしているのも頷ける話だ。
そんな誰からも愛されたクリスが浩司の使用人であると知れたときを想像すると、今から逃げる準備に余念を許せない。
そうなったらもう日光は浴びれないだろう。
しかしメイド本人は、浩司より大分大きく構え、自分を主人と崇める姿勢を崩さないものだからどうしようもなかった。
浩司は箸を口にくわえたまま首をぐでんと折り曲げた。
「浩司様、お行儀がわるうございます」
「ごめん…つい」
「いえ。私のみにでしたら良いのですが、余人の前で同じ事をと考えると、良くないかと」
「そう……だね」
素直に背筋を正し、食べ切った茶碗の上へ箸を置いた。
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