春風

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歩きながらiPodを聞き、通学する慧の姿を見れば、誰もが普通の高校生だと思うだろう。 しかし慧は、幼い頃から身近なモノとしていた、バスケットで中学時代、全国大会準優勝を経験したことがあるのだ。 ――タッタッタ… 髪を風に靡かせ、ゆっくりゆっくり足を運んでいくと、後ろから何者かがやってくる。 「慧ー!」 その柔らかい女性の声は、慧の付けるイヤホンによって阻まれ、届いてはいない…。 慧にしてみれば、イヤホンから流れる音楽を口ずさんでいる。 足音は――更に… ――バシッッ! 不意に慧の背中に、軽快とは無縁の透き通った音が、響きわたる。
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