春風

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「ここか…」 相も変わらず音楽を聞いている慧は、途端に真剣な表情をすると、唾を飲む。 「緊張してんのー?」 「ば、ばか! 違うよ!」 咲の唐突な問いが核心を突いたのか、動揺を見せる慧。 そんな光景を見つめる、何人かの男子生徒。 視線の先は――咲…。 「ねぇー皆に見られてる…」 「ばーか、それは…って」 咲は男子生徒に見られてると言うことに、不快感を抱いたのか、足早にその場を立ち去る。 容姿端麗が故、周りの視線を集める咲だが、好意を持たれていると気付いていないのだから、余程の鈍感である。 「慧!」 静静と足を動かす慧に、何やら掲示板みたいな所にて叫ぶ咲の姿が、伺える。 「同じだよー」 咲の言葉に肩を落とす慧。 「またかぁ…」 「宜しくね!」 実を言うと… 慧と咲は16年間の付き合いが由縁なのか、学校と言う学校では、一度もクラスが離れたことがないのだ。
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