2950人が本棚に入れています
本棚に追加
『朝から…嫌な気分…』
優しい風が慧の楽しみを、攫っていくかの如く目を擦る慧。
擦ったところで、現実は変わらない…。
「10年目だね!」
咲は嬉しいようで、喜びを露わにしては、慧の腕に飛び付く。
「ばか、皆見てんだろ」
「恥ずかしいの?」
決して恋人同士では無い2人だが、幼なじみが故こういうことは多い。
「相変わらず仲が良いな」
そんな2人の後ろで、低く味のある声が響き渡る。
慧が振り向くと、そこには背の高い大男。
髪が長く端正な顔つきは、ある程度の女子なら惹かれてしまうかもしれない。
「龍斗君…?」
先に声を出したのは咲。
大男にしては高校生のため、少年の部類に属する少年、佐神 龍斗(さがみ りゅうと)は、優しく微笑むなり歩き出す。
慧と龍斗と咲…。
この3人は中学時代、全国大会準優勝を喫した時の立役者でもある。
――龍斗――
最初のコメントを投稿しよう!