春風

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『朝から…嫌な気分…』 優しい風が慧の楽しみを、攫っていくかの如く目を擦る慧。 擦ったところで、現実は変わらない…。 「10年目だね!」 咲は嬉しいようで、喜びを露わにしては、慧の腕に飛び付く。 「ばか、皆見てんだろ」 「恥ずかしいの?」 決して恋人同士では無い2人だが、幼なじみが故こういうことは多い。 「相変わらず仲が良いな」 そんな2人の後ろで、低く味のある声が響き渡る。 慧が振り向くと、そこには背の高い大男。 髪が長く端正な顔つきは、ある程度の女子なら惹かれてしまうかもしれない。 「龍斗君…?」 先に声を出したのは咲。 大男にしては高校生のため、少年の部類に属する少年、佐神 龍斗(さがみ りゅうと)は、優しく微笑むなり歩き出す。 慧と龍斗と咲…。 この3人は中学時代、全国大会準優勝を喫した時の立役者でもある。 ――龍斗――image=156238618.jpg
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